今回は「日中韓歴史認識問題」に絡んで、歴史の影の部分とその認識、いわゆる「歴史認識」についてです。

私は、相互に不信感・嫌悪感をもたらす「歴史認識」の双方の主張や差異、その根拠等を出来るだけ冷静に理解したいと、幾つかの関連書籍、それもそれぞれ対極に位置する書籍を読むように努めて来ました。結果、私なりに相手の理解も深まった感はありますが、やはり釈然とせず納得出来ない部分が多々あることは否めません。

先日ある書物に出会いました。先の大戦で敗れその後復興し発展を遂げた、日本と似た立場のドイツ、そのドイツと日本の戦後の取り組みの違いを記した「日本とドイツ ふたつの「戦後」:熊谷 徹氏著 集英社新書」です。    ドイツと日本の先の大戦への謝罪は異なる、との評があります。そこでドイツの戦後を知りたいと本書に興味を持ちました。

ドイツに25年住んだ著者による、様々な角度から見た詳細かつ説得力のある内容は総じて興味深いものでしたが、中でも著者が1989年にブラント元首相に「歴史との対決」についてインタビューしたくだりは強く心に残りました。元首相は、若者に歴史の影の部分について伝える事の重要性について次の様に語ったそうです。

「若者たちが過去の事について無関心になるのは当然の事だ。彼らが前の世代の犯罪について、重荷を背負わされる事を拒否するのはごく自然な事だ。若者たちには、父親や祖父がした事について責任は無い。しかし彼らは同時に、自国の歴史の流れから外へ出る事は出来ないと言う事も知るべきだ。そして若者は、ドイツの歴史の美しい部分だけでは無く、暗い部分についても勉強しなくてはならない。それは、他の国の人々が、我々ドイツ人を厳しく見る理由を知る為だ。そしてドイツ人は、過去の問題から目をそむけるのではなく、たとえ不快で困難なものであっても、歴史を自分自身につきつけていかなくてはならないのだ」

「ドイツ」を「日本」に置き換えて読んだ時、皆さんはどうお考えですか?  「ナチスの人種差別政策と日本の大東亜共栄圏は違う」と?  「被害者から見れば、理由や被害の種類や大小も関係無い。同じ事」と?・・・・。